結論から
AIに実務を任せるとき、大事なのは「全部お願いする」ことではなく「どこまで任せて、どこから人が確認するか」の線引きを先に決めておくことだ。うちの内装工事会社では、AI秘書に日々の実務を任せる中で、線引きに失敗しかけた場面と、うまく引けた場面の両方を経験している。今回はその中から、①UIを真似る/真似ないの判断 ②経理の自動仕訳で推測をしない判断 ③二重登録を防ぐ設計、という3つの実例を紹介する。
1. 競合の画面を「真似る」か「真似ない」かは、比較して決める
自社で設計用のCADソフトを開発している。AIに「使いやすい画面にして」と丸投げすると、無難だけど誰の役にも立たない画面になりがちだ。そこでまず、資格試験対策アプリで自社UIと競合UIを並べて比較した。結果、この分野では自社UIの方がすでに競合より使いやすいという判定になり、「真似ない」という判断をした。一方、別のCADツールでは、競合の実画面を見て寄せるべき部分がはっきりしたので、そこは素直に寄せている。
大事なのは、「似せる/似せない」を感覚で決めず、実際に並べて比較してから決めたこと。AIに判断を丸投げするのではなく、AIに比較材料を出させたうえで判断する、という順番にしている。
2. 経理の自動仕訳は「分からなければ登録しない」
経理の取引データをAIに自動で仕訳させる仕組みを作った。最初は「わからない分類はAIが推測して埋める」やり方も考えたが、それはやめた。実際に運用したところ、対象706件のうち、確実に判定できたのは18件だけだった。数字だけ見ると「たった18件」と思うかもしれないが、これは意図した結果だ。
経理データは、間違った科目で登録されると後で気づきにくい。だから「分かるものだけ機械的に登録し、分からないものは人に投げる」というルールにした。AIの自動化で本当に怖いのは処理件数が少ないことではなく、自信満々に間違った答えを出すことだ。件数を絞ってでも確実な分だけ処理するほうが、結果として手戻りが少ない。
3. 二重登録を防ぐ設計は、後付けでは間に合わない
AIにデータ登録作業を任せると起きがちな事故が、二重登録だ。同じ取引や同じ案件を、既に登録済みと気づかずにもう一度登録してしまう。これを防ぐには「登録する前に、まず既存データと突き合わせる」処理を先に組み込んでおく必要がある。後から重複チェック機能を足そうとすると、その時点ですでに重複データが積み上がっていて、片付けの方が大仕事になる。
設計の順番としては、①まず既存データとの突合ロジックを作る、②その上で新規登録の自動化を載せる、という順序が安全だ。逆の順番でやると、AIが働けば働くほどデータが汚れていく、という本末転倒が起きる。
まとめ:AIに任せる前に、境界線を先に引く
3つの実例に共通するのは、AIに仕事を任せる「前に」、どこまで自動でやらせてどこから人が確認するかの境界線を決めている、という点だ。
- 感覚で似せる/似せないを決めず、比較してから判断する
- 自信のない答えは出させない。分かるものだけ処理する
- 事故が起きてから直すのではなく、事故が起きない設計を先に組み込む
建設・内装業でAI活用を検討している会社の多くは、「便利そうだけど、間違えたら怖い」という不安を抱えていると思う。その不安への答えは、AIの性能を上げることよりも、まずこうした境界線の設計にある。
うちでは、こうした実務の線引きも含めて、AI秘書「ラポ秘書」として日々の運用ノウハウを蓄積している。AIに実務を任せる仕組みづくりにご興味があれば、お気軽にお問い合わせください。