AIに定型業務を任せるとき、多くの人が気にするのは「ちゃんと動くか」です。でも実際に運用してみると、それ以上に大事なのは「止まったときに何が起きたかを自分で説明できるか」だとわかります。今回は、うちで常駐しているAI秘書が実際に経験した2つの出来事を紹介します。
1つ目: 途切れた投稿を、状態を確かめてから続行した
うちではYouTubeへの日次投稿を、AI秘書がブラウザ操作の自動化ツールで毎日実行しています。ある日、20時52分に投入された投稿処理が、5分後に常駐プロセスが再起動したことで途中で切れてしまいました。
人が介入しないまま、約20分後に自動の見張り役が「作業の動きが20分以上止まっている」と知らせてきました。AI秘書は再起動で作業が切れたことを把握したうえで、まず前回の投稿が最後まで終わっていたかを確かめました。結果は未投稿でした。あわせて、同じ画面を2つの作業が同時に触らないための目印(ロック)を点検すると、画面用のロックは期限切れのまま、ブラウザ用のロックは1か月以上前の、すでに終了したプロセスの名義のまま残っていました。
AI秘書はこれらの古いロックを片付けてから投稿処理を続行し、21時36分に公開まで完了させました。今回のポイントは、やみくもに最初からやり直さず、「投稿は終わっていたか」「切れた作業の後始末は残っていないか」を先に確かめてから続きを動かした点です。
2つ目: テストが全部緑でも「まだ実力は測れていない」と自己申告した
もう1つの出来事は、社内の判定ツールを改善していたときのものです。判定の一次担当を、選択肢から答えを選ぶ形式の別の仕組みに替え、判断がつかないものだけ従来のエンジンに回す案について、ドライラン(実際には何も送信しない確認専用モード)で新旧の判定を比べる道具を作りました。
このとき、テストは798件すべて緑で通過し、新旧の一致率という数字も出ました。数字だけ見れば「完璧に動いている」と報告したくなるところです。しかし実装したAI秘書は、比較に使った新しい判定側が、確認専用モードでは常に同じ答えを返す模擬応答(スタブ)で動いていることを踏まえ、「この一致率は配線がつながっていることの確認以上の意味はなく、実際の精度を測るには本番の判定を呼ぶ必要がある(外部送信を伴うので社長の判断が要る)」と報告しました。そのうえで、別のAIによる検収待ちの状態で作業を止めました。
798件緑や一致率という数字は気持ちよく見えます。ですが、その数字が何を測っていないのかまで書かなければ、報告としては半分しか仕事をしていません。AI秘書がこの区別を自分でつけて報告したことで、次に必要な作業(実際の応答を使った精度検証)がそのまま外部送信を伴うため社長の判断を待つ作業として切り分けられました。なお同じ夜、別のAIが検収したところ、この作業は差し戻されました。差し戻しの理由と、あわせて受けた指摘は次の3つです。模擬応答は常に同じ答えを返すため、一致率は記録側の答えの分布で自動的に決まる値で、求められていた比較になっていなかったこと。作業記録(票)の側にはその注意書きが無く、数字を実力と誤読されかねなかったこと。テスト件数の書き方にも誤り(新規分を二重に数えた)があったことです。正直な申告をしても、それで仕事が終わるわけではありません。測れていないものは測れていないと記録のすべてに書き、足りない作業は差し戻しを受けて続ける。そこまで揃って初めて効きます。
なぜこの2つが重要なのか
どちらの出来事にも共通しているのは、「結果」だけでなく「結果の意味」まで扱っている点です。
- 投稿が途中で切れた → やみくもにやり直さず、投稿済みかどうかと残ったロックを確かめてから続きを動かした
- テストが全部通り、比較の数字も出た → 「出た」で終わらせず、その数字が何を測っていないかまで明記した
業務を人に任せるときも同じことを求めるはずです。「できました」だけでなく、「何が原因で、次に何を確認すべきか」まで伝えてくれる相手のほうが、安心して仕事を任せられます。AI秘書にも同じ基準を持たせることで、報告を鵜呑みにせず、かつ余計な確認の手間も増やさない運用ができます。
小さな事業者でも同じ仕組みは作れる
小さな見張り役を1つ置き、次の2点を最初のルールにするだけで近いことができます。
- 自動処理が止まったら、まず「前回何が起きていたか」を確認してから再実行する運用にする
- テストや検証の結果を報告するときは、「何を確認できたか」と「何は確認できていないか」を分けて書かせる
どちらも特別な技術ではなく、AIへの指示の書き方と、報告フォーマットの決め方の問題です。
まとめ
AI秘書の価値は「止まらないこと」ではなく、「止まったときに理由を説明できること」と、「うまくいったように見えるときほど、その裏にある未検証の部分を隠さないこと」にあります。動いた・動かなかったの二択ではなく、その結果に何の意味があるかまで報告させる。これができると、AIに任せられる業務の範囲は着実に広がっていきます。
AI秘書の導入は、日々の定型業務の棚卸しから一緒に整えます
ラポ秘書サービスでは、自動化した処理が止まったときの検知・再開のルールや、報告フォーマットの設計まで含めて伴走します。何から自動化すべきか決まっていない段階でも大丈夫です。