給排水は、内装の中でも見えない部分だから後回しにしがちです。床や照明、カウンターの素材はすぐ目に入りますが、配管の勾配や水圧は図面だけでは実感しにくいもの。ところが営業が始まってから水が流れない、厨房の水量が足りない、臭いが上がるとなると、営業停止や追加費用に直結します。店舗づくりでは、給排水こそ早い段階で判断すべき重要項目です。
なぜ給排水工事でトラブルが起きやすいか
店舗の給排水トラブルは、工事が雑だったからだけで起きるわけではありません。多くは「最初に確認すべき条件」を見落としたまま、レイアウトや機器を決めてしまうことで発生します。
代表的なのが配管勾配です。排水はポンプで押し出すのではなく、基本的には自然流下で流します。配管に十分な下がり勾配がなければ、油や食材カスが管内に残り、数カ月から数年かけて詰まりの原因になります。床を上げれば解決できることもありますが、天井高やバリアフリー、客席の見え方に影響します。
水圧も重要です。食洗機、製氷機、手洗い、シンクを同時に使ったときに水量が落ちると、オペレーションが止まります。特にランチタイムや閉店前の洗浄が集中する時間帯は、計算上の余裕がないと現場が苦しくなります。
さらに、既存配管の老朽化があります。居抜き物件では「前の店も使っていたから大丈夫」と思いがちですが、管の内側に油脂が固着していたり、古い鉄管が腐食していたりするケースがあります。表面上は使えても、新しい業態の負荷に耐えられるとは限りません。
判断基準① — 既存配管の活用可否
最初に見るべきは、既存配管を活かせるかどうかです。ここを曖昧にしたまま見積もりを取ると、後から「やはり引き直しが必要です」となり、費用も工期も変わります。
確認するポイントは3つあります。
| 確認項目 | 見るべき内容 | 判断の目安 | |---|---|---| | 年数 | 前回更新からの経過年数 | 20年以上なら更新前提で検討 | | 材質 | 塩ビ管、鉄管、鋳鉄管など | 腐食やサビがある管は要注意 | | 勾配 | 排水先までの下がり | 厨房排水は最低でも1/100を目安 |
年数は管理会社や前テナントの資料で確認します。資料がない場合は、点検口や床下、天井内を見て配管の状態を推測します。古い物件では一部だけ新しく、一部は古いままということもあるため、見える範囲だけで判断しないことが大切です。
材質は耐久性とメンテナンス性に関わります。塩ビ管は一般的ですが、接続部の劣化や勾配不足があれば詰まりやすくなります。鉄管や鋳鉄管は年数が経つと腐食や内径の狭まりが起きやすく、飲食店の油脂排水には不向きな状態になっていることがあります。
勾配は、厨房やトイレの配置を決める前に確認します。排水先から遠い場所にシンクを置くほど、床上げが必要になる可能性が高くなります。「この位置に厨房を置きたい」ではなく、「この物件で無理なく排水できる位置はどこか」から考えると、後悔が減ります。
判断基準② — 厨房機器の水量計算
次に、厨房機器が必要とする水量を計算します。給水管があるだけでは十分ではありません。同時使用したときに必要な水量を確保できるかを見ます。
店舗規模別の目安は以下です。
| 店舗規模 | 想定業態 | 必要水量の目安 | |---|---|---| | 小規模 | テイクアウト、軽飲食、10席前後のカフェ | 15〜25L/min | | 中規模 | 20〜40席のカフェ、定食、居酒屋 | 30〜50L/min | | 大規模 | 50席以上、食洗機複数台、仕込み量が多い店舗 | 60〜90L/min |
これはあくまで初期検討の目安です。実際には、二槽シンク、手洗い器、食洗機、製氷機、ドリンクディスペンサー、トイレ、清掃用水栓を個別に拾い、同時使用率を見て計算します。
たとえば小さなカフェでも、ランチ後に食洗機を回しながらシンクで洗い物をし、同時に製氷機が給水することがあります。客席数だけで「小規模だから大丈夫」と判断すると、ピーク時に水量不足が起きます。
ラポルタでは、設備機器の品番が決まっていない段階でも、想定メニューと席数から仮の水量を置きます。後で機器が変わったときに配管をやり直さなくて済むよう、余裕を持った配管径とバルブ位置を計画します。
判断基準③ — 排水トラブルの防衛策
排水トラブルは、起きてから直すより、起きにくい設計にしておくほうが安く済みます。特に飲食店ではグリストラップ、油対策、定期清掃契約の3つをセットで考えます。
グリストラップは、油脂分を排水の手前で分離する設備です。容量が小さいとすぐに満杯になり、臭いや詰まりの原因になります。逆に大きければよいわけでもなく、設置スペース、床下の深さ、清掃動線とのバランスが必要です。
油対策では、厨房内の運用も設計に含めます。揚げ油を直接排水に流さないことは当然として、シンク前に残菜カゴを置けるか、床排水に食材カスが入りにくいか、清掃用ホースをどこに収納するかまで考えます。設備だけ立派でも、スタッフが使いにくければルールは続きません。
定期清掃契約も防衛策です。排水管洗浄やグリストラップ清掃を「汚れたら呼ぶ」にすると、忙しい時期ほど先延ばしになります。月1回、2カ月に1回、四半期に1回など、業態と排水量に合わせて最初から予定化しておくと、営業中の緊急対応を減らせます。
うちならこうする
ラポルタでは、給排水を内装図面の後に考えるのではなく、物件調査の初期段階で見ます。最初に確認するのは、排水先、既存配管の材質、点検口の位置、床下や天井内の配管ルート、水道メーターと給水管径です。
現場では、シンクや厨房機器を置きたい位置にマスキングで印を出し、排水先までの距離と必要勾配をその場で確認します。床を何センチ上げる必要があるか、客席側に段差が出るか、厨房入口の納まりに無理がないかまで見ます。
居抜き物件では、前テナントの使い方も確認します。揚げ物中心だったのか、カフェ営業だったのか、営業時間が長かったのかで配管の汚れ方は変わります。可能であれば通水テストを行い、流れ方、臭気、漏水跡を見ます。怪しい場合は、内視鏡調査や高圧洗浄を先に提案します。
見積もりでは「既存利用」「一部更新」「全面引き直し」の3案を出すことがあります。初期費用だけなら既存利用が安く見えますが、営業後の詰まり対応や床を壊すリスクまで含めると、一部更新が最も合理的なこともあります。大事なのは、安い案を選ぶことではなく、リスクを知った上で選ぶことです。
店舗の給排水工事は、見えないからこそ最初の判断で差が出ます。物件選びの段階でも、レイアウトが固まる前でも構いません。「この物件で飲食店ができるか」「既存配管を使ってよいか」を一緒に確認します。
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