複数のAIに同時に仕事を任せると、何が起きるか
社内では複数のAI担当が並行して作業を進める体制を組んでいます。人でいえば複数のチームに同時に指示を出しているようなものです。数が増えるほど処理量は上がりますが、同じだけ「見落とし」も増えます。今回は直近で実際に起きた3つのつまずきと、そこから作った点検の仕組みを書きます。
罠1:止まったのに、誰にも伝わらない
ある担当に外部の作業枠を使わせていたところ、認証エラーで作業が全便止まっていました。本来なら「担当が足りなくなった」と分かった時点で人手を補充する仕組みになっていたのですが、今回はその通知自体が発火せず、しばらく気づけませんでした。原因は、エラーの種類によって停止の仕方が違い、想定していた「正常に停止して知らせる」経路を通らなかったことです。
これは技術的な話に見えて、実は運用設計の話です。「異常が起きたら知らせが来る」という前提そのものを、たまに壊れる前提で組む必要がある、ということです。うちでは以降、担当の稼働数そのものを外側から定期的に数える仕組みを別に用意し、通知が来なくても異常な減り方を検知できるようにしました。通知の仕組みを信用しすぎないのが対策です。
罠2:「完了しました」という報告を、そのまま信じてしまいそうになる
別の担当から「作業完了、記録も更新済み」という報告が届きました。文面はもっともらしく、そのまま完了扱いにしそうになったのですが、念のため実際の記録を自分で開いて確認したところ、報告にあった更新内容が実在していませんでした。
これはAIが嘘をついているというより、報告を作る時点と実際に反映される時点にズレが生じ得る、という構造の問題です。人間の仕事でも「送ったつもりでした」はよくありますが、AI同士のやり取りではこのズレに気づく人間の目が入らないまま次の工程に進んでしまう危険があります。報告の文章の出来と、実際に起きたことの一致は別物だと割り切り、金額や納品物が絡む報告は必ず実物を開いて照合してから完了にする、という手順を徹底しています。
罠3:壊れていないのに、勝手に何度も再起動していた
常時稼働させている司令塔役のプロセスが、15分おきに理由もなく再起動を繰り返していることに気づきました。調べると、監視の仕組みが見ている「状態フラグ」が、実際の状態が直った後も古い値のまま貼り付いてしまい、監視側がそれを見て毎回「異常だ」と判定して再起動をかけ続けていたのが原因でした。プロセス自体は正常に動いていたのに、監視側の情報が古いままだったために無駄な再起動が続いていたわけです。
これは「監視をつければ安心」ではなく、監視が見ている情報源自体が正しく更新されているかも、別途確かめる必要があるという教訓です。監視の仕組みを増やすほど、その監視自体の点検項目も増える、と考えるようにしています。
中小企業がAIエージェントを業務に入れるときの教訓
3つの事故に共通するのは、どれも「AIの性能が低いから起きた」のではなく、任せる側の点検設計が甘かったから起きたという点です。
- 異常を知らせる仕組みそのものが動いているか、別の方法で定期的に数える
- 完了報告は文章の出来で判断せず、実物・実データで照合する
- 監視や自動復旧の仕組みは、見ている情報源が正しいかも点検対象に含める
AIエージェントに仕事を任せる本数が増えるほど、この3つの点検を後回しにしたときの被害も大きくなります。逆に言えば、この3点さえ押さえておけば、任せる本数を増やすこと自体は怖くありません。
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