現況:「遊ばせない」方針と、実際の稼働は別物だった
うちでは提案用の完成イメージやSNS素材づくりに、自社のGPUサーバーで画像・動画を生成しています。せっかく機材を持っているのだから遊ばせず常に何か作らせておく、という方針を決めていました。
ところが、プロセス自体は動き続けているのに、実際にはジョブが一向に消化されていない時間帯があることに気づきました。デーモンが生きている、キューにジョブが積まれている、という「生存確認」だけでは、実際に仕事が進んでいるかどうかは分からなかったのです。稼働率という数字は健全そうに見えても、中身を見ると空回りしていることがある。この差にどう気づき、どう直したかをまとめます。
対応:止まっていた理由を、実際のログで3つ洗い出した
生存確認をやめて、ジョブが「積まれてから完了するまで」の実ログを1件ずつ追いました。すると、原因は1つではなく、性質の違う3つの詰まり方が同時に起きていることが分かりました。
理由1:別用途の安全装置が、無関係なジョブまで止めていた
動画生成の直後にメモリ不足で落ちないよう、「動画ジョブの後は一定時間、次のジョブを止める」安全装置を入れていました。ところがこの装置は動画かどうかを区別せず、性質の違う画像生成のジョブまで一律で止めてしまっていました。しかも一度止まったジョブが同じ処理を延々と待ち直す作りになっていたため、本来数秒で終わるはずの画像ジョブが数百回単位で待たされ続けていました。安全のための仕組みが、対象を絞らなかったせいで別のレーンを丸ごと塞いでいたわけです。
理由2:順番待ちの仕組みが、1本のジョブに全体を人質に取らせていた
キューの処理は「順番に1件ずつ確認していく」単純な作りでした。ある1件が詰まって待ち直しを繰り返している間、その後ろに並ぶ別の機材向けのジョブは、順番が回ってこないため一切手つかずのまま待たされていました。詰まっているのは1本のジョブなのに、影響は列全体に広がっていました。
理由3:「空いているか」を確認する基準が、埋まっている数字を見ていた
新しいジョブを始めてよいかどうかは、GPUの使用率を見て判断していました。しかしその使用率自体を、常時動いている別の常駐処理が高く占有していたため、「空いているはずのタイミング」でも判定上は常に「埋まっている」扱いになり、優先度の高いジョブが延々と待たされていました。基準にした数字そのものが、実態を映していなかったということです。
結果:稼働率でなく、詰まった実物を見る運用に変えた
3つとも、原因は違いますが共通点がありました。「動いているように見える数字」を信じて安心してしまうと、実際に止まっている仕組みには気づけないということです。
対応としては、安全装置は対象の種類ごとに区別して掛ける、1本の詰まりが列全体を止めない設計に直す、空き具合の判定は今まさに動いている処理数のような直接の実態で見る、という3点に直しました。どれも派手な改善ではありませんが、稼働率という間接的な数字を疑い、実際のログという直接の証拠で判断する習慣に変えたことが、いちばん効いたと感じています。
実は同じ「稼働率だけでは気づけない」失敗を、今回の3つとは別のところでもやっていました。9/5にWindows Updateが古いグラフィックドライバを誤って配信し、上位GPU(24GB機)がOS側から見えなくなっていたのですが、nvidia-smiの表示は「健全」で、GPU自体は動き続けているように見えていました。実際には約8時間、その1台だけが完全に空転していて、原因が「ドライバの退行」だと突き止めるまで気づけませんでした。復旧はドライバの再インストールではなく、Windows Updateが注入したパッケージ自体をpnputilコマンドで削除する形で決着しています。稼働率や生存確認だけでなく、「台数」や「バージョン」のような直接の実態値まで見る習慣が要る、という点は本文の3つの理由と地続きの教訓でした。
まとめ:遊ばせない方針は、稼働率でなく実物のログで検証する
「機材を遊ばせない」という方針そのものは間違っていませんでしたが、それを検証する手段が稼働率という間接指標だけでは不十分でした。中小企業がAI活用や設備投資の効果を測るときも、「動いているはず」で止めず、実際に仕事が進んでいるかを直接確認する仕組みまでセットで持つことが大事だと感じた一件でした。
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