工事のトラブルって、何が原因で起きると思いますか。
騒音でしょうか。ホコリでしょうか。エレベーターの傷でしょうか。
全部違います。正直に言うと、10年やってきて一番多かったのは**「そんなの聞いてない」**の一言です。同じ騒音でも、事前に一声かけてあれば「今日あれね」で終わる。かけていないと、その日のうちに管理会社へ電話が入ります。
ぶっちゃけ、僕も昔やらかしました。世田谷のマンション1階、35坪の飲食店の居抜き改装。真上の住戸だけ挨拶して、斜め上と隣を飛ばしたんです。解体2日目に苦情が入って、工事は半日止まりました。半日止まると職人4人分の手待ちが出ます。損失は約8万円。挨拶を1軒省いた代償としては高すぎました。
今日は、その後に固めた段取りを全部書きます。
挨拶回りの範囲とタイミング
まず範囲。ここをケチると必ず刺さります。
僕らの基準はこうです。
- マンション・ビル:上下左右+斜め上下の計8戸。加えて同じフロア全戸と、管理人室・管理組合
- 戸建て:両隣+向かい3軒+裏3軒の「向こう三軒両隣」
- 路面店:左右2軒ずつ+向かいの店舗。飲食が入るなら匂いの届く範囲まで広げる
「そこまでやる?」と思いますよね。でも1軒あたり2〜3分、全部で30分の作業です。工事が半日止まるリスクと比べたら、比較にならないくらい安い保険なんです。
タイミングは着工の3〜7日前。当日朝はダメです。心の準備をする時間を奪ってしまう。
そして渡すもの。手土産は500〜1,000円のタオルで十分です。本命は紙のほうで、ここに4つ書きます。
- 工期(○月○日〜○月○日、○日間)
- 作業時間(平日9:00〜17:00、日祝は休工)
- 一番うるさい日(解体日は具体的な日付で明記)
- 現場責任者の携帯番号
4番が効きます。管理会社を経由せず直接電話が来るようになると、クレームが「相談」に変わるんです。これは体感でかなり大きい。
養生の基本と共用部対応
養生は「汚さないため」だと思われがちですが、半分違います。傷をつけたときに、それが自分たちのものか証明するためでもあるんです。
基本セットはこの3つ。
- 床:プラベニ(プラスチック養生ボード)+ブルーシート。ガムテは直貼り禁止、必ず養生テープ
- 壁・柱:出隅(コーナー)部分はコーナーガード。ここを一番ぶつけます
- 共用部:エレベーター内は専用養生、廊下は搬入動線の全長
共用部の養生費は、35坪クラスの現場で5〜8万円が目安です。見積書で「一式」とだけ書かれていたら、内訳を聞いてください。ここを削る業者は、たいてい後で揉めます。
そして一番大事なこと。着工前に共用部の写真を撮る。
エレベーターの内壁、廊下の床、玄関ドア周り。既存の傷を全部押さえておきます。うちでは30〜50枚撮って現場フォルダに残す運用です。これをやっていないと、元からあった傷まで「工事でついた」ことにされます。実際に一度、5万円の補修費を請求されかけて、写真1枚で覆したことがあります。
養生は保険じゃなくて、証拠です。
騒音・搬入のクレーム対策
騒音は消せません。だから予告して、集中させるしかない。リフォームの騒音対策は、防音材を足すことではなく段取りで削ることだと考えています。
やっていることは3つです。
1. うるさい工事を前半に固める 解体・はつり・コア抜き。これを工期の最初3日に寄せます。だらだら10日間鳴らすより、3日で終わらせて「あと静かです」と言えるほうが、住民のストレスは圧倒的に小さい。
2. 静音時間帯を守る 朝は9時前に音を出さない。昼12〜13時は電動工具を止める。夕方は17時で切り上げる。マンションによっては管理規約で決まっていますが、規約がなくても同じ運用にしています。
3. 搬入は時間を指定して事前通知する 「明日10時〜11時、資材搬入でエレベーターを使います」。この一文を前日に貼るだけで苦情が激減しました。人は不便より、予測できない不便に腹を立てるんです。
あと地味に効くのが、職人の駐車です。近隣の路上に停めるとそれだけで通報されます。コインパーキング代は現場経費に最初から入れておく。1日2,000〜3,000円、10日で3万円弱。ここをケチると信用を失います。
つまり騒音対策の中身は、機材ではなく情報の出し方です。「いつ・どれくらい鳴るか」を先に配ってしまえば、同じ音量でもクレーム件数は目に見えて落ちます。
マンション特有の注意点
マンションは戸建てとは別ルールで動きます。管理組合という「もう一つの発注者」から条件が降ってくるからです。
着工前に必ず確認するのはこの5点。
- 工事申請書の提出期限(着工の2週間〜1ヶ月前が多い)
- 工事可能時間と可能曜日(日祝NGが大半、土曜もNGの物件あり)
- エレベーターの積載寸法(長尺物が入らず現場で切る羽目になる)
- 共用部の養生範囲指定(組合指定の仕様がある場合あり)
- 駐車・荷捌きスペースの有無
特に3番目。3mの下地材がエレベーターに入らなくて、階段で7階まで手上げしたことがあります。人工が1.5人分余計にかかりました。事前に内寸を測っていれば、工場でカットして持ち込めた話です。
申請期限も甘く見てはいけません。1ヶ月前提出の物件で、2週間前に出して着工が3週間ずれたことがあります。テナントの家賃だけが空回りして、オーナーさんに頭を下げました。
段取りとは、前倒しで恥をかいておくことだと思っています。
挨拶と養生は、工事費じゃなくて信用の投資
まとめます。
- 挨拶は着工3〜7日前、マンションなら最低8戸+管理室
- 渡す紙に「工期・作業時間・一番うるさい日・責任者の携帯」
- 共用部養生は35坪で5〜8万円。着工前に写真30〜50枚
- 騒音工事は最初の3日に集中、搬入は前日予告
- マンションは申請期限とエレベーター内寸を最優先で確認
これ全部やっても、費用にすれば10万円前後です。工事が半日止まる損失、管理組合と揉めて出禁になるリスク、オーナーさんの評判。それらと天秤にかけたら、迷う余地はないと思っています。
ラポルタでは、世田谷を中心に内装・リフォームをやっています。図面を引く前の段階、「うちのマンション、そもそも工事できるの?」という相談が一番多い。それで正解だと思います。段取りは早いほど選択肢が増えますから。
物件が決まっていなくても構いません。まずは相談から、一緒にやりましょう。
